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取材こぼれ話〜経営者編
何気ない一言が灯りをともす 大星公二相談役/NTTドコモ(於:東京都千代田区本社) |
新幹線から地下鉄を乗り継ぎ、溜池山王駅から外に出ることなく地下を通りぬけて、オフィスのある山王パークタワーへ。ガラス張りのオフィスから広がる赤坂や永田町の風景は圧巻。地方都市に住んでいる私は、こういうところへ来ると「東京に来たんだぁ」と興奮をするというか、身の引き締まる想いがします。
そのオフィスの奥の重厚な部屋から登場された大星相談役は、とても愉快で熱血漢という印象を与える方でした。楽しい話しぶりに、ついつい引き込まれます。
当時、NTTドコモは「グレートマザー物語」という番組のスポンサーをしていました。有名人が有名人になれたのは、その背景に彼らを育てた母親がいるというコンセプトのもと、有名人の生い立ちと母との関係を浮き彫りにしていくという番組です。
取材ではそのことにも話が及びました。そのとき大星相談役が突然!「雅子さん、あなた上手に育ちましたね」とおっしゃいました。私は少しうろたえて「いえ、あの、そんなことを言っていただく年齢じゃないんです」。相談役は意に介さず、「こんなに大らかに育つっていうのは、あなたのお母様、よほどご立派な方なんでしょう」
すっかり素になった私は「いえ、教育ママで、勉強、勉強って言われて育ちました。賢く生んでもらっていないのに、そういうこと言われると、本当に苦渋に満ちました。そういう面で、私は大らかじゃありません」と、言う必要のないことをポロリ。相談役はそれを笑いながら聞かれた後、「グレートマザー物語にお母様を出してあげられるようになれるといいね。そのときはドコモ挙げて、喜んでスポンサーしますよ。がんばんなさいね」と励ましてくださいました。
そんな大それたことと思いましたが、その後、本を執筆しているとき、その言葉が思い出され、あんなことを言ってくださる方もいるんだ、だからメゲずに書き続けよう。そう思えたこともたしかです。
きっと相談役はもうおっしゃったことも、忘れられていると思います。でも、言われた者の心には、それが光を伴って鮮やかに残るということがあります。それが言葉のもつチカラであり、脅威でもあるのでしょう。
同じ発するなら、人の心に灯りをともすような言葉を遣いたい。特に影響力のある人は、そうですね。
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