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『ミッションマネジメントの理論と実践−経営理念の実現に向けて−』中央経済社
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2. 理念はなぜ必要なのか?
理念が必要な理由はいろいろありますが、そのなかでも特に「働くときの指針」になる点を、ここでは述べたいと思います。
時代は、もはや経済が右肩上がりに成長をし続けていたときとは、まったく様相が変わってきました。人生の望ましいモデルケースが提示され、皆が豊かになりたいという共通の目的に向かって努力できた時代は、もしかすると理念などなくても、成果を上げることができたのかもしれません。
だけど、今はどうでしょう。経済は行き着くところまで行き着き、目の前に広がっているのは飽和状態と閉塞感。変わり続けることが不可欠な現在、そこにあるのは多様性であり、不確実性です。そして、もしかすると、その底流に流れているのは、脱力感かもしれません。
また、今まで絶対的と信じられていた価値観が、崩れ去ったり、揺れ動いているのが現代です。はたして何が正しく、何が間違っているのか。そこに明確な答えがあるわけではなく、むしろ、なんでもありの時代、反面、なんにもなしの時代。おそらくそんな表現ができるでしょう。
このように、わかりにくい世の中だからこそ、根底を支える指針となる理念、これがなければ組織は軸がぶれてしまいます。
なぜ人は働くのか、組織としてどこへ進んでいくのか。それは一見、青臭く感じられるかもしれません。でも、働くに値する魅力的な中心ともいうべき哲学を、もう一度見つめ直したり、新しい価値を創造していくことが、今こそ、強く求められているのではないでしょうか。
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