既存の書籍は、「理念を浸透させる」という上意下達的な視点のものが大半を占めています。『エクセレント・カンパニー』しかり、『ビジョナリー・カンパニー』しかり、著名経営者が執筆した書籍もそうです。そこでは壮大な組織行動の提示の元、理念の重要性について強く主張をされています。しかし、その成功ぶりを知ることはできても、働く一人一人が実践に移すことができる内容になっているのかと言われれば疑問が残ります。
本書では、理念浸透を「わかちあい」ととらえています。そのため若手から経営者に至るまで、階層ごとにインタビュー調査を実施し、それを元に、個人が理念を理解するメカニズムを明らかにしました。
若手には若手の、管理者には管理者なりの理念を理解する独特のプロセスがあることを明示することで、働くうえで重要となるものや、組織に求められる心がけや提供すべきことがらを浮かび上がらせています。
また、それだけにとどまらず、理念浸透施策も合わせて検討しました。そこでは経営者と管理者がとっている浸透施策を、可能な限り部下の語りに照らし合わせて有効性を検証したり、部下となる管理者・若手の言葉から理念の理解に役立つと思われることがらを抽出しました。そして、どのようなリーダーシップや施策を講じれば理念浸透が進むのかを具体的に展開しています。
このように、理念を「理解する視点」と「浸透させる視点」の双方を包括して論じた書籍はいまだ見当たらず、立場や視点を変えて読み進めることができるようになっています。 |