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ほろ酔いだっこ2003

 
 人に見せる姿、見せない姿の巻

帰りの通勤電車で知り合いを発見。懸命に本を読む姿に言葉をかけることがためらわれました。

今、彼は職場で憂き目にあっていると、人づてに聞いたことがあります。だけど、電車のなかでも黙々と本を読み、ラインマーカーを走らせる。その姿を凝視することができず、窓に映る姿を追いました。

窓の向こうには沈み行く太陽。静かに地平線へと進んでいきます。本を読む彼の姿を、太陽が赤く染めていく。

ふと浮かんだ今日の会議の光景。パフォーマンス豊かに振る舞う人。心のなかはどうなのかな?人には見せない姿がある。だけど、人に見せるためだけの姿もある。

そんなことを知ってか知らずか、いいよ、それもこれも有りというように、太陽は人を照らし、建物を照らし、草木を照らし、沈んでいく。

暮れなずむ街。乱立したビルから見える空の色は、もうすっかり紫色です。そんな南大阪の風景を眺めながら、電車のなかで涙ぐんでしまいました。

きっと、きっと、報われるからね。

窓の彼に、そして自分に言い聞かせながら、気がつくと終点の難波。駅の白い光に迎えられ、帰路を急ぐ私がそこにいました。




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