tanakamasako
To top pageProfile研究業績研究内容講演ミッションマネジメントEssayお問合わせ
ほろ酔いだっこ2003

 
 記憶に残る美しい女性〜突然の雨の日のおねえさん〜の巻

14歳のある日、学校の帰り道に、にわか雨にあいました。古ぼけた学生アパートの軒下に駆け込んだものの、雨はひどくなる一方で、たたきつける雨を見つめながら、私は途方に暮れました。

「よかったら、この傘使って」

そのとき背後から声がして、驚いて私は振り返りました。そこの住人らしい20歳ぐらいの女性が傘をもって、たたずんでいます。静かな笑顔の美しい人。彼女の着ている白いブラウスが、暗い通用門に光を投げかけたかのように、一瞬あたりが明るく見えました。

帰り道、広げた傘を眺めながら、いつか大人になったとき、あんな女性になりたいと、繰り返し思ったことを覚えています。

彼女の年齢をはるかに超えた今でも、雨が降ると思い出す「大人のおねえさん」。

大人になれば、日々もっと静かに、もっと豊かに、時間が広がっていくと感じていました。だけど、いくつになっても、いたらないことやできないこと、あわてたり落ち込んだりすることが数多くあります。中学生のあの頃のほうが、ずっと大胆で、しなやかだった気さえするのは、私だけでしょうか?いつまでたっても憧れのおねえさんを超えることはできません。でも、年齢を重ねてよかった。

キティちゃんの便箋にお礼状を書いて傘の柄に結びつけた14歳の私は、物書きになりたいと思っていました。その夢に、少しでも近づけたことが、とてもうれしいから。



まさこの今

見た瞬間に、きれい!と心が止まった女性が、今までに3人います。雨の日のおねえさんは、そのうちの1人です。

3人に共通しているところは、柔らかな笑顔と、清潔な物腰、そして凛とした、たたずまい。私がなりたい女性像といえるでしょう。

だけど、鏡の自分を見ると、そのほど遠さが口惜しくて。思わず目を閉じてしまいます。目を開けたとき、あんな人になっていますようにと、魔法の言葉でもつぶやきましょうか。



                                                   新・ほろ酔いだっこもくじに戻る


無断複写の禁止