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ほろ酔いだっこ2003

 
 マグロの覚悟。今日も元気に泳ぎたいの巻

仕事で知り合ったコンサル会社の営業マン。私の講演をずいぶん評価してくれた人で、ある日、講演がひけてから、お寿司を食べにいったときのこと。

彼が一言。「田中、マグロになれよ」

カウンター越しの注文のやりとりを、しばらく見た後「トビコじゃ注文されへんし、トロじゃ限られた人しか頼まへん。田中、マグロになって、日本中、飛び回れるようになれよ」

なんだか、その励まし方が楽しくて、そうですねー、田中マサコじゃなくて、田中マグロになりますね、でもやっぱりトロが好き、などと言いつつ頬張ったものでした。

それから数年後、プライベートで辛いことが多くあり、頑張らなければどうしようもないという時期がありました。明けても暮れても忙しく動き回り、でもその忙しさは、決して前向きな生産性のあるものではない。ただ、止まることができない。止まってはいけない。そんな日々のなか、マグロは動き続けないと呼吸ができなくなってしまうので、一生泳ぎ続けているという話を聞きました。

「今の私はマグロだ」。そんな想いに全身包まれ、言いようのないむなしさを覚えたのです。彼と話がしたい。けれど、彼はコンサル会社を辞め、もはや行方知れずでした。

ところが、ある日、1通の転職通知が届きました。「またしても営業マンです。僕はこれしかできませんからね。でも、心機一転。がんばります」

彼に何があったのか、私には知る由もありません。ただ、文面から感じられるのは、営業に対する強い意志。そして、思い出されるのは、以前交わした会話でした。

「ホンマは営業なんて向いてへんねん。学生時代から油絵をやってて、自分の世界に浸って何かをつくるというようなことが、性に合ってると思う」

生きていくということは、誰しも、夢物語ではないのでしょう。だけど、もし、人生を少しでも夢に近づけることができるとすれば、それは、「覚悟を決めること」なのかもしれません。

こんなはずじゃなかった、向いていないのに、どうして私だけ。そんなことを言い続けている限り、実は泳ぐことさえ、できていないのでしょう。眠っているように感じられる才能も、やるせない現実も、全部全部受けとめて、目の前にある物事にとりかかれば、違う一面が見えてくるかもしれないと、1通の手紙が教えてくれたような気がしました。

同じ泳ぎ続けるなら、潔く、楽しんで。田中マグロ!今日も、浮き輪つけて、がんばりまーす!(ええかげんなヤッちゃー)



まさこの今

好んで使う言葉って誰しもありますね。「覚悟を決める」というのは、そのひとつです。読み直してみると、エッセイのなかでも何度か出てきています。

私は本来、甘えたで頼りたい性格なのです。そんな私が仕事をし続けていくためには、「覚悟を決める」こと、これを自分に強いてきた気がします。表面だけを見れば、強く感じられるかもしれません。だけど、自分を支える、それは唯一の方法だったように思います。

以前は、うまくいくことに焦点をあて、その言葉を遣っていたような気がします。「覚悟を決めれば、きっとうまくいく」そんな感じです。だけど、今は、どちらに転んでもいい。そんな気持ちで、この言葉を遣っています。仮に悪いと感じられるほうに転んだとしても、それが神様の思し召しなら、それも「覚悟を決めて受け容れよう」。そう思いながら、日々過ごしています。


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