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どうして不安なのか |
「あのね、あたしなんか後で考えて、『ああ、あのときは、あんなに若かったのに』って思ったことが山ほどある。一日一日をだーいじに、好きなように、生きなさいよ」(中略)
やはり祖母には祖母の「生きられなかった自分」への思いがあったのかもしれない。茫漠とひろがるばかりで、いつの間にか食い潰されてしまう時間がおそろしくてたまらないのは、ほんとうにしたいことから逃げているからなのだと、私はもう自分に対して認めざるを得なくなってしまった。
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湯本香樹実(1997)『ポプラの秋』新潮社 |
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