あたりは乾燥地帯で空気は乾ききっている。かんかん照りの日差しが容赦なく降り注ぐ。そして岩の地肌。植物の生育にこれ以上の悪環境はあるまい。たとえ小さくとも、か細くとも、そこに花が咲いていること自体が奇跡的である。
もっといい環境で、肥沃な土壌に根を下ろし、湿り気をたっぷり吸収して育ちたかった−この花はそんなふうに思ったことがあるだろうか、と考えた。だが、花は答えてくれない。環境がよかろうが悪かろうが、与えられた条件を最大限に生かし、ただただ懸命に茎を伸ばし、精一杯に花弁を咲かせて、自分に与えられた命をひたすら謳歌していた。
与えられた環境の中で、ひたすら生きるものは美しい。私は命の本質に触れた気がして、こみ上げる感動に、しばし、われを忘れた。
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