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 言葉のチカラ

生きる流儀を貫く

私たちはなにか行動を起こすばあい、「将来」ということに、そして、「幸福」ということに、あまりにこだわりすぎるようです。一口でいえば、今日より明日は「よりよき生活」ということにばかり、心を用いすぎるのです。その結果、私たちは「よりよき生活」を失い、幸福に見はなされてしまったのではないでしょうか。 それならここに、もう一つ別な生き方もあったのだということを憶い起こしてみてはどうか。というのは、将来、幸福になるかどうかはわからない、また「よりよき生活」が訪れるかどうかわからない、が、自分はこうしたいし、こういう流儀で生きてきたのだから、この道を採る−そういう生きかたがあるはずです。いわば自分の生活や行動に道筋をたてようとし、そのために過ちを犯しても、「不幸」になっても、それはやむをえぬということです。


福田恆存(1998)『私の幸福論』ちくま文庫


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