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見果てぬ夢と現実と

 
深夜のパリ。美しい友人 パリ/フランス

パックツアーには、ほとんど参加しないんですが、その数少ない思い出です。

どうして参加しないかというと、私は形にはめられたり、強制されるのがキライ。それは学生の頃からそうで、規則だ決まりだと、取るに足りないことを、うるさく言われたり、あるべき論を振りかざされたりすると、グレた気分になって、気がつくと悪態をついてしまう性格なんです。

そう、制服なんて大キライッ。制服のある学校や職場になんて行くもんか!個性があるのに、なんで同じものを着なきゃなんないんだ!そんなもの着るぐらいだったら、水着でも着ていってやる!(逮捕されるよ…)という感じで、今に至りました。だから、パックツアーもキライなんです。

でも、友人と参加したフランス、スイス、ドイツのパックツアーは、とても楽しく優しい思い出として記憶に残っています。

女性同士の旅行って、このホテルに泊まるなら、この洋服。このバーに行くなら、このドレス。というように、オシャレと旅行がセットになっているってところがありますよね。

とはいえ、私はどちらかというと、あまりカッコを気にせず、ほしいものは現地調達というスタイルで旅行をするタイプなんです。でも、今回は寒さが忍び寄る晩秋のヨーロッパ。紅葉が美しく、吐く息がかすかに白く、考えただけでロマンチック。オシャレして、シャンゼリゼでシルブプレ?これで行こうと、固く固く決めていました。

パリに着いて二日目。私は朱色のモヘアの半そでワンピースに、リバーシブルのコート。ディナーに行き、かたつむりを食べて元気に帰ってきました。固い志の甲斐あって、昨夜もレストランで「あなたはシックだ」とお褒めの言葉をちょうだいし、すっかりイイ気分に。ふふふ。明日もがんばる!

明日はコートの裏側をカジュアルに着ようとハンガーにかけた瞬間。きゃあ!!モヘアの毛がつきまくって、とても着られる状況ではありません。どうしよう。コートはこれしかもってきていないのに。ミーハーで行くと決めた旅行で、オシャレが決まらないのはイタイ。

ベッドにうつ伏せになって、どうしようどうしようとバタバタしていると、「困ったねぇ」と友人は言っています。うつ伏せになったまま、私は、あ〜最悪ぅ〜と、バタバタ泳いでいました。しばらく一人でジャレた後、寝ころびながら体を友人のほうに向けると…。友人は「困ったねぇ」と言いながら、バンドエイドでコートについた毛を、とってくれています。とても追いつく量ではありません。

ベッドから飛び起きました。自分がもってきたバンドエイドを急いで出して、二人並んで、深夜3時ごろまで、とり続けたものです。

パリと聞くと、一番に思い出すのは、友人のあの優しさ、そのときの表情、交わした会話。それはどんな風景よりも鮮やかに、温かく、私の心を包みます。

女性の本当の美しさを教えてくれたのは、シャンゼリゼにあるブティックでもなければ、芸術の宝庫であるルーブル美術館でもない。それは黙々とコートの毛をとってくれた、彼女の横顔。

私は今、あんな女性になれたでしょうか。ふと自問してしまいます。




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