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見果てぬ夢と現実と

 
両替に1時間!船に乗り遅れる サンタ・ルチア/イタリア

今まで行った国の中で、どこよりも好き、何よりも好きなのはイタリア。だけど、ゼンゼン文章になりません。好きというのは、そういうことかもしれませんね。そうか。好きな人に気持ちが伝わらないのは、そのせいだったのか。あっ、それは別として…。

大好きな、大好きなイタリア。

私はお酒が大好き。お酒に合うお料理を考えて作るのも大好き。さらに、お料理は器でおいしさが変わるので、飲んだり作ったりするのと同じほど、器やグラスにも興味を持っています。ヴェネツィアに行ったら、ぜひ訪れたいと思っていたのが、ヴェネツィアングラスの聖地、ムラーノ島。

船に乗っていく前に、両替のため、銀行に行きました。

陽気で明るい銀行マンは、5000円札を見て「何、コレ?お札?」と子供のような顔つきです。「割と前にこの新札に変わったんですよ」というと「見たことないなぁ、おもちゃみたいだなぁ」と透かしたり、裏向けたり。さらに銀行マンは、異様にハイテンションで、急に「サンタ・ルチア」を歌い出しました。…日本では考えられません。

パソコンで確認をするも、すぐに窓口にやってきて「5000円札のモデルはキミ?」と身を乗り出して聞いてきます。私は「これは樋口一葉っていう小説家です。ちゃんと見てよ。顔も、着てるものも違うでしょ」「あっ、ほんとだ、キミのほうがきれいだ」「さっすがイタリア人ね」「いや、それほどでも」

う〜ん。やっぱり日本ではあり得ません…。冗談はどーでもいいから、早く仕事してよ。仕事を!

彼はデスクに戻り、パソコンを凝視しているかと思ったら、またしても窓口にやってきて「今日の予定は?」と聞いてきます。「ムラーノに行くんです」すると、「あぁ、あそこに行ったらね、船着き場から西に三筋目。川沿いの、〜ってレストラン、あそこの魚料理とワインがおしいしいから」と、もうほとんど観光案内所状態です。

そんなやりとりを繰り返すこと1時間弱。やっと確認がとれました!

銀行マンは、さらに活気づいて言います。「僕は人間が古いから、新札が出たことを知らなかったんだよ。ま、いわば僕は旧札だね。あっ、キミは新札だな」

遠の昔に船は出てしまいました…。私の頭のなかでは「♪オ〜ソレミ〜ヨ」がグルグルと回り始めるのでした。

ムラーノに着いたのは午後過ぎ。おススメのレストランはやっぱり満員。平日なのにすごい人です。でも、そのお店のお魚料理のおしいことといったら。さらに白ワインは格別です。おいしい〜。両替に時間はかかったけれど、教えてくれた銀行マンにグラッツィエ。

……でも、スペインに行ったときも、切手一枚買うのに、郵便局で似たような経験をしました。ギリシャに永住した友人からも同じような話を聞きます。大好きなイタリアが、財政破綻に陥らないことを、心から祈っています…。




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