天王寺で生まれ育った友人は、旅行から帰ってきてネオンの光を見ると、ホッとすると言います。彼女にとって心安らぐ状態とは、ネオンの光であり、通天閣であり、雑踏に身をおくことなのでしょう。
そこまではいかないとしても、私も都会が好き。たとえば、東京は大好きな街の一つです。ここを中心に日本が動いていると感じさせる、あのエネルギーは何度行ってもたまりません。住んでもいいと思うぐらいです。
という嗜好も手伝って、今までは旅行をするにしても、都会や歴史的建造物・文化的なものが興味の中心を占めていました。
だけど、自然っていいなぁと思ったのが、ニュージーランド。私が行ったのは、南島にあるミルフォードです。毎日、もう本当に毎日、トレッキングをしました。
空を仰ぎ、川の流れに立ち止まり、鳥の声に耳を傾け、緑の青さに癒される。歩いても、歩いても、美しさに限りはなく、どちらを向いても自然に包まれている心地よさ。夜は疲れてぐっすり眠り、そして、また翌日、自然と共に過ごす。
日々の生活を振り返れば、無機質で非生産的なものが、どれだけ多いことか。たった1時間の会議で疲弊する、あの空間。気づかないうちに、頑張るばかりの自分を生み出し続ける日常。「向上心」といえば、前向きで美しいけれど、結局それは今の自分に対する「否定感」からくる努力じゃないのか。
負けん気だけ強くて、本当は頼りない私。それもかわいいよって、無理しなくていいからって、本当は言ってほしいのに。そう言われたら、胸がきゅうんとするほど嬉しいのに。そんなことを求めながらも、自分にかけ続ける言葉は、叱咤ときどき激励。
自然のなかで、こうして何も考えずにいるように、ありのままでいいのにね。やりたくないことなんかしなくても、何も不都合はないのにね。そんな優しい言葉を、自分に、そして誰かにかけてみる。自分が言ってほしい言葉を遣うようにする。それだけで人は幸せになれるかもしれないって。
そんなことを、フゥーっと思った日々。ニュージーランドで過ごした時間は、私のなかに眠っていた、自然に生きることや、自然に触れることの大切さを、呼び覚ましてくれたような気がします。
そう言いながらも、今年も「やらなければ」で1年が過ぎた気がして、なんだかため息。11月中旬の学会発表が終わって、少し一段落したら、心が望む、もっと女らしい生き方に近づいていこうって、ストンと沈む夕暮の太陽を見て、しみじみ思っています。
|